昨今、クライアントの環境に合わせてPowerPointとGoogleスライドを行き来するケースが増えてきているのではないでしょうか。

社内はMicrosoft 365だが、クライアント先はGoogle Workspace。提案資料をPowerPointで作り、共有時にGoogleスライドへ変換したらフォントが崩れてレイアウトが総崩れ——そんな経験をお持ちの方も少なくないはずです。

フォント選びやスライドサイズの設定は、一見すると些末なテーマに思えます。しかし、ここにルールがないままだと、資料を作るたびに「どのフォントにしよう」「サイズはどうしよう」「変換して大丈夫か」と悩む時間が積み重なります。資料の体裁を仕組み化すれば、浮いた時間を企画の中身やクライアントへの提案に充てられる。小さな改善のようで、組織の生産性に直結するテーマです。

McKinseyやBCG、Bainといった外資コンサルティングファームには、スライド作成に関する明確なルールが存在します。本記事では、そうしたファームの基準を紹介しつつ、私たちギアソリューションズが実務で辿り着いた最適解をお伝えします。

外資コンサルファームのスライドルール

大手戦略ファームのスライド作成には、驚くほど細かい基準が存在します。以下は、公開情報や実務経験者の証言をもとにした主要3社の比較です。

項目 McKinsey BCG Bain
フォント Arial(本文)+ Georgia(タイトル) Trebuchet MS統一 Helvetica / Calibri系
本文サイズ 非公開(社内標準あり) 11〜12pt 11〜12pt
タイトルサイズ 非公開(社内標準あり) 18〜20pt 同程度
配色 ブルー基調 グリーンアクセント(#009639) レッドアクセント
カラー上限 3〜4色 最大3色/チャート 3〜4色
情報密度 テキスト多め・構造的 チャート多め・ミニマル バランス型

3社に共通しているのは、「アクションタイトル」と呼ばれるルールです。スライドのタイトルは単なる見出し(例:「売上分析」)ではなく、そのスライドの結論を1文で書きます(例:「売上は前年比15%成長し、市場平均の3倍のペースで推移」)。15語以下、2行以内が鉄則とされています。

また、BCGには「スマートシンプリシティ」という設計哲学があり、「1枚のスライドは10秒で理解できるべき」とされています。McKinseyでは「Ghost Deck」という手法が知られており、スライドの構成・ストーリーに全体の40%の時間を使い、分析に30%、デザインに30%という配分が推奨されています。

こうした細部への徹底が、いわゆる「コンサル資料」の質感を支えています。

ギアソリューションズの実務基準

ファームのルールは参考になりますが、そのまま適用するのは現実的ではありません。私たちは実務の中で試行錯誤した結果、以下の基準に落ち着きました。

フォント:Noto Sans JP × Arial

日本語はNoto Sans JP、英数字はArial。この組み合わせが、質感と互換性の両面で最適だと考えています。

質感の良さ。 Noto Sans JPはGoogleが開発したオープンソースフォントで、ウェイト(太さ)がThin(100)からBlack(900)まで9段階あります。見出しはBold、本文はRegularと使い分けることで、1つのフォントファミリーだけで資料全体の濃淡を表現できます。印刷でも画面でも可読性が高く、クセがないのにプロフェッショナルな印象を保てるフォントです。

GoogleスライドとPowerPointの互換性。 これが最大の選定理由です。Noto Sans JPはGoogle Fontsに標準搭載されているため、Googleスライドで開いてもフォントが崩れません。ArialはPowerPointでもGoogleスライドでも標準フォントです。つまり、どちらの環境で開いても見た目がほぼ変わりません。

メイリオや游ゴシックで作成したPowerPointをGoogleスライドに変換すると、フォントが置き換わりレイアウトが崩れるケースは少なくありません。クライアントがGoogle Workspaceを利用している場合、これは致命的です。Noto Sans JP + Arialであれば、そのリスクをほぼゼロにできます。

McKinseyも本文フォントにArialを採用しています。外資コンサルの標準と同じ英数字フォントを使いつつ、日本語側はGoogleエコシステムと完全互換のNoto Sans JPで補う。和英混在の資料では、これが最も安定した組み合わせです。

[設定方法]
PowerPointの「表示」→「スライドマスター」→「フォント」→「フォントのカスタマイズ」で、英数字用にArial、日本語用にNoto Sans JPを設定すれば、入力時に自動で切り替わります。Noto Sans JPは事前にGoogle Fontsからダウンロード・インストールしておいてください。

スライドサイズ:投影は16:9、印刷はA4横

スライドサイズは投影・画面共有用途であれば16:9で作成しています。現代のモニターやプロジェクターはほぼすべて16:9対応であり、これが標準です。外資コンサルファームもプレゼン用途では16:9への移行が進んでいます。

一方で、印刷が前提の場合はA4横(297×210mm)で作成します。

16:9のスライドをそのままA4用紙に印刷すると、上下に約4cmの余白が生じます。コンテンツ自体も縮小されるため、情報密度が低く見えてしまいます。これは16:9(アスペクト比1.778)とA4横(アスペクト比1.414)の比率が大きく異なるためです。

サイズ 寸法 アスペクト比 A4印刷時の余白
16:9 33.87 × 19.05 cm 1.778 上下に約4cm
4:3 25.4 × 19.05 cm 1.333 小さいが残る
A4横 29.7 × 21.0 cm 1.414 なし

クライアントに紙で渡す「リーブ・ビハインド」資料や、役員会向けの「ボードパック」は、最初からA4横で作成するのがお勧めです。外資コンサルファームでも、紙配布前提の資料はA4横またはUSレター横で作成するのが標準的な運用です。

[注意点]
PowerPointの組み込み「A4」プリセットは実際のA4サイズより少し小さい(10.833×7.5インチ)設定になっています。カスタムサイズで幅29.7cm×高さ21.0cmを手動設定するのが確実です。

まとめ

フォントもスライドサイズも、「とりあえずデフォルト」で作っている方は多いのではないでしょうか。しかし、用途から逆算して基準を決めるだけで、資料の印象は大きく変わります。

  • フォント → Noto Sans JP + Arial(質感と互換性の最適解)
  • サイズ → 投影は16:9、印刷はA4横(297×210mm)

この2つをチームの共通ルールにするだけで、毎回の「フォントどうしよう」「サイズどうしよう」がなくなります。仕組み化できる部分は仕組み化し、浮いた時間を企画の中身や顧客への提案に充てる。資料作成も、そういう発想で取り組む価値があるテーマです。

参考情報