「AI営業ツールはひと通り検討した。一部は導入もした。しかし事業の数値は思ったほど動かない」――そんな声を、B2B企業の経営者からよく耳にします。

問題の所在は、ツールの選定にはありません。もっと根本的な、GTM(Go-to-Market)全体の設計思想にあります。世界では2024年から2025年にかけて「AI-Powered GTM」という新しい言葉が立ち上がり、Highspot、Salesforce、ZoomInfo、Forresterといった主要プレイヤーが一斉にこの概念を体系化し始めました。本記事では、英語圏で進行している構造変化の本質と、日本のB2B企業がいま向き合うべき5つの構造的ギャップを、海外の一次情報を引きながら解説します。

なぜ今、世界のB2B企業は「AI-Powered GTM」を語り始めたのか?

「AI-Powered GTM」という言葉は、2024年後半から2025年にかけて、英語圏のB2B業界で急速に共通言語化しました。同時に「GTM AI」「Agentic AI for GTM」といった類似用語も立ち上がり、Highspot、ZoomInfo、Forrester、Salesforce、Demandbaseといった主要プレイヤーが、それぞれ独自のフレームワークを発表し始めています。

なぜ今、これらの言葉が必要だったのでしょうか。

これまでのB2B業界では「Sales AI」「マーケティングAI」「CRM AI」といった縦割りのツール論が支配的でした。営業の効率化、マーケティングのパーソナライゼーション、CRMデータの活用――それぞれは便利な機能でしたが、事業全体の成長にどう寄与するのかが見えづらい構造でした。

ここに対して、AI-Powered GTMという言葉は「AIを個別ツールではなく、GTM全体を貫く設計原理として捉え直す」という視座を提示します。Highspotの公式定義は、この変化を端的に示しています。

“AI is no longer optional…It’s foundational.”

―― Highspot

業界共通言語が同時多発的に生まれるとき、そこには通常、構造変化の地殻変動があります。AI-Powered GTMという用語の急速な広がりは、「個別ツールの導入競争から、GTM全体の再設計競争へ」という潮流の変化を示していると言えるでしょう。

なお、「AI-Powered GTM」「GTM AI」「Agentic AI for GTM」という3つの用語は、厳密には少しずつニュアンスが異なります。AI-Powered GTM は最も包括的な上位概念であり、GTM AI は実装ツール群を指す傾向が強く、Agentic AI for GTM は次フェーズである自律エージェント中心の世界観を指します。本記事では最も包括的な「AI-Powered GTM」を統一表記として使用します。

AI-Powered GTM はどこまで広がっているのか?

AI-Powered GTMが本当に「現実の動き」になっているのか、データで確認してみます。

最も信頼できる調査は、McKinsey & Companyの「Unlocking gen AI in B2B sales」です。この調査によれば、グローバルのB2B営業組織のうち19%が既に生成AIを実装、23%が実験中となっており、合計42%、ほぼ半数が何らかの形でAI活用を始めています。

McKinseyはこの調査の中で、B2B営業における7つのコアユースケースを提示しています。

# ユースケース 内容
1 Next-best opportunity 次に攻めるべき顧客の特定
2 Next-best action 次に取るべき具体的アクションの推奨
3 ミーティング準備 顧客情報・過去履歴の自動サマリ
4 RFP回答 提案書・見積書の自動生成
5 動的価格設定 顧客文脈に応じた価格最適化
6 パーソナライズドアウトリーチ 顧客個別の文面・チャネル選定
7 コンバセーショナル・コーチング 営業担当への対話分析フィードバック

これらは「便利な機能の集まり」ではありません。営業プロセスの全段階を網羅的にカバーしています。McKinseyの提示するこのフレームは、AI-Powered GTMがツール導入の話ではなく、営業プロセスそのものの再設計であることを物語っています。

さらに踏み込んだ予測がForresterから出ています。

“AI agents are already augmenting the B2B go-to-market workforce — and workflows — at a rapid pace”

―― Forrester

Forresterの調査によれば、B2BまたはB2B2C組織のうち74%が既にAIエージェントを採用しており、14%が導入予定となっています。両者を合わせると88%の組織が、自律的に動作するAIエージェントを自社のGTMに組み込もうとしています。これは「Sales AI」が「Agentic AI for GTM」へと進化している現実を示す、極めて重要な数字です。

ROIに関する定量データも蓄積されつつあります。ZoomInfoのレポートによれば、AI-Powered GTM戦略を高度に導入した企業では、収益成長5倍、利益向上89%、企業評価額2.5倍という結果が報告されています。

“Companies that employ advanced GTM strategies built with AI…have 5X revenue growth, 89% higher profits, and are 2.5X more valuable.”

―― ZoomInfo

また、AI利用者は平均で週12時間の業務時間を節約しているという数字も併せて公表されています。

ただし、これらの数字を額面通りに受け取るのは早計です。導入企業にはセレクションバイアス、すなわち既に組織能力が高い企業が早期に導入している傾向があり、ベンダー発信の数字には自社プラットフォーム訴求の側面もあります。それでも「動いている企業」と「動いていない企業」の差が、年単位で広がりつつあることは、複数の調査が示す共通の結論と言えるでしょう。

AI-Powered GTM は何で構成されているのか?

AI-Powered GTMという概念は包括的すぎて、つかみどころがないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。本章では、世界の主要プレイヤーが提示するモデルを統合し、4層モデルとして整理します。

このモデルは、Highspotが提唱する4階層モデルと、ZoomInfoの3層構造、そしてForresterのAgentic AI論を統合したものです。日本語で初めての体系統合となります。

役割 代表的なツール例
シグナル層 顧客行動・意図データのリアルタイム捕捉 ZoomInfo, Demandbase, 6sense
判断層 次のベストアクションの推奨、優先順位付け Salesforce Einstein, Gong
実行層 メール生成、ミーティング準備、コンテンツ作成 Outreach, Highspot, Clay
エージェント層 自律的に動くAIエージェント Salesforce Agentforce, 11x.ai

各層がどのような役割を果たすのか、順に見ていきます。

シグナル層:顧客の「動き」を捉える

シグナル層は、顧客や見込み客の行動データをリアルタイムで捕捉する役割を担います。Webサイト訪問、コンテンツダウンロード、検索クエリ、SNS上の発言、ニュースリリースなど、ありとあらゆる「顧客が発するシグナル」を構造化されたデータとして収集します。

ZoomInfoやDemandbase、6senseといったプラットフォームがこの層の代表格です。彼らが扱うデータには、ファイログラフィック(企業規模、業界、テックスタック)、エンゲージメント指標、インテント信号(購買意欲を示唆する行動パターン)の3種類があります。

シグナル層が機能しなければ、後段の判断層・実行層も適切に動作しません。AI-Powered GTMの土台となる層です。よくある失敗パターンは、CRMに行動データが入っていない状態のまま、いきなりシグナル層のプラットフォームを契約してしまうことです。データの蛇口を整える前に、計測器を買ってしまっているような状態と言えるでしょう。

判断層:次の一手を推奨する

判断層は、シグナル層から流れてくるデータを分析し、「いま、誰に、何をすべきか」を推奨する役割を担います。Salesforce Einsteinや会話分析プラットフォームのGongなどがこの層に位置します。

McKinseyが提示する7つのコアユースケースのうち、Next-best opportunity と Next-best action がこの層の中核です。営業担当者が「自分の経験と勘」で優先順位を決めていた領域が、データ駆動の推奨に置き換わります。ここでの落とし穴は、判断ロジックがブラックボックス化することです。なぜAIがその顧客を推奨したのかを現場が説明できなければ、最終的に「AIの言うことは信用しない」という不信感に転じてしまいます。

実行層:行動を自動化する

実行層は、判断層が推奨したアクションを実際に実行する役割です。メール文面の自動生成、ミーティング準備資料の作成、提案書の下書き、コンテンツのパーソナライズなど、これまで営業担当が時間を費やしてきた定型業務を、AIが代行します。

OutreachやHighspot、Clayといったプラットフォームがこの層を担います。Highspotの調査によれば、AI駆動プラットフォームを導入したB2B営業チームの82%が生産性向上を報告し、うち37%が20%超の生産性改善を実現しています。ここでありがちな失敗は、実行層だけを先に導入することです。シグナル層と判断層が脆弱なまま自動化されたメールが大量に送られると、「精度の低い大量行動」が顧客を疲弊させ、ブランドを毀損します。

エージェント層:自律的に動く

そしていま、最も注目を集めているのがエージェント層です。これまでのAIは「人間が指示を与えると応答する」存在でしたが、エージェント層のAIは自ら目標を設定し、複数のタスクを連続して実行する自律性を持ちます。

Forresterの定義では、Agentic AIは「目標指向で自己改善する特化型AIエージェントであり、リード調査・見込み客特定・エンゲージメント・適格化・交渉・複雑な案件の実行までを自律的に担う」とされています。

“These AI agents will autonomously research, identify, and engage prospects to qualify opportunities, negotiate, and even execute complex deals.”

―― Forrester

エージェント層は、まだ各社が実験的に展開している段階ですが、Salesforce Agentforce や 11x.ai などの専業ベンダーが急速に台頭しています。

4層モデルが示す本質

この4層モデルが示しているのは、「ツール選定」が問題の本質ではないという事実です。4つの層をどう組み合わせ、自社のGTMをどう再設計するか――そこに本当の問いがあります。

実際、英語圏では既に4層を高速に統合したAI-Nativeスタートアップが、既存の業界構造を破壊し始めています。たとえば、AIコーディングプラットフォームのLovableは、創業からわずか8ヶ月で年間売上1億ドルに到達しました。リーガルテックのHarveyも1億ドル、AIタレントマッチングのMercorは年率4.5億ドルの実行率を記録しています。

“Momentum as a moat matters more than traditional defensibility…”

―― AI-Native GTM Playbook (Substack)

これらの企業に共通するのは、巨大な営業組織を抱えていない点です。少人数のチームが4層を統合的に運用することで、従来の10倍のレバレッジを実現しています。

[実践ポイント]

4層モデルを自社に適用する際、最初にやるべきは「自社のGTMはどの層が一番詰まっているか」を診断することです。多くの企業が実行層から手をつけたがりますが、実はシグナル層と判断層の脆弱さが本当のボトルネックであるケースが大半です。順序を守らないかぎり、4層は連動しません。

なぜ日本のB2B企業はAI-Powered GTM の波に乗り遅れるのか?

ここまで世界の動きを整理してきましたが、では日本のB2B企業はどの位置にいるのでしょうか。

数字で確認してみます。McKinseyの調査では米国B2B営業の42%(19%実装+23%実験)が動いていますが、PwC Japanの調査によれば、日本のサプライチェーン領域でAIを「導入済」または「試験導入中」の企業は合計25%にとどまります。営業領域に限ればさらに低い可能性が高いでしょう。

しかも、量だけでなく質的な差があります。

“日本企業は既存業務効率化に生成AIを活用しているのに対して、米国企業は顧客サービスへの活用や新規事業への還元に取り組むなど、活用の実態に大きな差があることが明らかになりました。”

―― PwC Japan

つまり、米国企業は顧客接点や事業創出にAIを使っているのに対し、日本企業はバックオフィス的な業務効率化にとどまっているのです。これがAI-Powered GTMの文脈で見ると、極めて深刻な差になります。

なぜこのような差が生まれるのでしょうか。日本のB2B企業が直面している5つの構造的ギャップを整理します。

ギャップ①:データ基盤の脆弱性

シグナル層が機能するには、顧客行動データが構造化されて蓄積されている必要があります。しかし日本のB2B企業の多くは、CRMの活用率自体が低く、そもそもAIに食わせるデータが整っていないのが実情です。

「AIを導入すればデータ活用が進む」と考えるのは順序が逆です。AI-Powered GTMにおいては、データ基盤の整備が前提条件であり、ここを飛ばして上位層のツールを導入しても、期待した成果は得られません。

ギャップ②:営業×マーケティングの組織サイロ

4層モデルは、組織横断の連携を前提としています。シグナル層はマーケティングが、判断層はインサイドセールスが、実行層はフィールドセールスが担うように、機能横断の情報の流れが必要です。

しかし日本のB2B企業では、営業部門とマーケティング部門が別々のKPIで動き、データも分断されているケースが大半です。この構造のままAI-Powered GTMを導入しても、4層が連動せず、個別ツールの集まりになってしまいます。

ギャップ③:「導入したが本番化しない」問題

これは日本だけの問題ではありませんが、Forresterの調査が示す数字は衝撃的です。

“B2B Companies Will Lose More Than $10 Billion Because Of Ungoverned Use Of Generative AI”

―― Forrester 2026 Predictions

Forresterによれば、AIユースケースの31%しか本番環境に到達しないとされています。残りの3分の2は、実験段階で消えていきます。さらに2026年末までに「Death by AI」と呼ばれる法的トラブルが2,000件超に達するという予測も出ています。

日本企業の場合、ガバナンス意識は相対的に高いものの、それが過度な慎重さに転じて実験そのものが進まないという別の問題を抱えています。

ギャップ④:AI活用の目的が業務効率化止まり

PwC Japanの指摘の通り、日本企業のAI活用は業務効率化に偏っています。しかしAI-Powered GTMの本質は「新しい売上の作り方」にあります。

業務効率化は経営層から見れば「コスト削減プロジェクト」ですが、AI-Powered GTMは「事業成長プロジェクト」です。両者は経営における優先順位がまったく異なります。日本企業がAIを「IT部門の話」「現場の効率化の話」と捉えている限り、本質的な構造変化は起きにくいでしょう。

ギャップ⑤:経営層の関与不足

最も根深いギャップが、これです。AI-Powered GTMは事業設計の話であり、本来は事業責任者・経営層が主導すべきテーマです。しかし日本では、AIを「現場の話」「ITの話」として現場に丸投げしているケースが少なくありません。

事業責任者が4層モデルを理解しないままツール選定が進むと、ベンダーのデモに振り回され、断片的な導入で終わってしまいます。経営層がGTM全体の地図を描き、その中でAIの位置づけを定義する――この役割を誰が担うのかが、勝敗を分けます。

これら5つのギャップは、ネガティブな材料ではありません。むしろ「ここを越えれば差をつけられる」というレバレッジポイントでもあります。海外と完全に同じ道を辿る必要はなく、日本の構造的な制約を踏まえた独自の順序設計こそが、後発の優位性につながるはずです。

日本のB2B事業責任者は、いま何から始めるべきか?

ここまで世界と日本のギャップを整理してきました。では、日本のB2B事業責任者はいま、具体的に何から始めるべきでしょうか。

ここで重要なのは、「焦って全層を一気に導入してはいけない」ということです。Forresterが示した「31%しか本番化しない」という数字は、無計画な導入の末路を物語っています。選択と集中、そして順序設計が決定的に重要です。

最初に取り組むべき優先アクションを3つに絞ります。

優先①:AI-Powered GTM を「ツール選定」ではなく「事業設計」の問題として扱う

最初のステップは、ツールの比較検討ではありません。経営層自身が4層モデルを理解し、自社のGTMがどの層に課題を抱えているかを棚卸しすることです。

ここで避けるべきは、ベンダーのデモから入ることです。デモを見ると、誰でも「便利そうだ」と感じてしまい、自社の本当のボトルネックが見えなくなります。「AIで何ができるか」ではなく、「自社のGTMのどこが詰まっているか」から逆算して考えます。シグナル層が弱いのか、判断層が属人化しているのか、実行層に時間を取られすぎているのか――この診断が最初の一手です。

優先②:データ基盤の整備を最初に置く

シグナル層が機能しなければ、判断層も実行層も動きません。多くの日本企業にとって、最初に投資すべきはAIツールではなく、顧客データを構造化して蓄積する基盤そのものです。

CRMの活用率を上げる、Webサイト訪問データを取得する、商談履歴を構造化して残す――こうした地味な作業が、AI-Powered GTMの土台になります。いきなり実行層やエージェント層に投資する前に、土台を固める順序を守るべきです。

優先③:小さく始めて、現場の手触りを失わない設計にする

3つ目は、1つの顧客セグメント、1つの事業単位で4層を統合的に試すことです。全社一律で導入しようとするから、本番化に至らないのです。

特定セグメントで成功パターンを作り、現場の声を拾いながら改善する。この小さく始めて学ぶサイクルを回すことが、結果的に最速の道筋になります。

[実践ポイント]

AI-Powered GTM の導入は「ツール選定の問題」ではなく「事業責任者の意思決定の問題」です。最初の3ヶ月で取り組むべきは、ツールの比較検討ではなく、自社のGTMを4層モデルで棚卸しし、どの層から手をつけるかの優先順位を経営層が決めることです。この順序を守らないまま導入を進めると、Forresterが指摘する「本番化しない69%」の側に転落するリスクが高まります。

まとめ:AIが定型を担うほど、事業責任者は市場に出る時間を取り戻す

本記事では、AI-Powered GTMという新しい概念を、海外の一次情報に基づいて整理してきました。要点を3行で振り返ります。

  • AI-Powered GTMは個別ツールの話ではなく、シグナル・判断・実行・エージェントの4層を統合してGTM全体を再設計する新しい原理である
  • 米国B2B営業の42%が動き、Forresterは74%のB2B組織がAIエージェントを採用済と報告する一方、日本企業は25%にとどまり、しかも業務効率化中心という質的なギャップがある
  • 日本のB2B事業責任者がいま取るべきは、ツール選定ではなく事業設計としてのGTM棚卸し、データ基盤の整備、小さく始める順序設計である

AI-Powered GTMは不可逆な構造変化です。そしてこの変化は、皮肉なことに「人間の役割をより本質的にする」方向に向かっています。

定型業務、ミーティング準備、初期的なリード対応、提案書のドラフト作成――こうした時間を奪っていた仕事をAIが担うほど、事業責任者と現場のキーパーソンには「市場に出て、顧客と一次情報で向き合う時間」が戻ってきます。本来のGo-to-Market、すなわち「市場へ行く」という行動が、ようやく現実のものになる。私たちがGTM-Led Growthと呼んでいる事業の在り方は、AI-Powered GTMの時代にこそ実現可能になるのかもしれません。

ギアソリューションズでは、B2B企業のGTM全体設計と、AI活用の優先順位付け・実装伴走をハンズオンで支援しています。「自社のGTMをどこから再設計すべきかわからない」「個別ツールは導入したが事業数値が動かない」という課題をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

AI-Powered GTM についてよくある質問

Q1. AI-Powered GTM と従来の Sales AI / MarTech の違いは何ですか?

従来のSales AIやMarTechは、営業またはマーケティングという個別機能にAIを適用するアプローチでした。AI-Powered GTM は、これら個別機能を超えて、シグナル・判断・実行・エージェントという4層をGTM全体で統合する事業設計の概念です。「ツールを入れる」のではなく「事業を再設計する」点が本質的な違いです。

Q2. 「GTM AI」「Agentic AI for GTM」とはどう違うのですか?

これらは関連する用語ですが、ニュアンスが異なります。AI-Powered GTM は最も包括的な上位概念で、GTMにおけるAI活用全般を指します。GTM AI は実装ツール群を指す傾向が強く、ZoomInfoなどが推進する用語です。Agentic AI for GTM は次フェーズである自律エージェント中心の世界観を指し、Forresterが体系化を進めています。

Q3. 日本企業はどの層から導入すべきですか?

シグナル層、すなわちデータ基盤から着手すべきです。判断層・実行層・エージェント層の精度は、シグナル層のデータ品質に依存します。CRM活用、Webサイト訪問データ取得、商談履歴の構造化といった地味な作業を最初に固めることが、結果的に最速の道筋になります。

Q4. AI-Powered GTM を導入すれば営業人員は減りますか?

短期的には定型業務の自動化により、特定業務に従事する人員は減る可能性があります。しかしGartnerは「2030年までに、B2B買い手の多数が真の人的関与を重視する販売体験を好むようになる」と予測しています。営業の役割はなくなるのではなく、「複雑な意思決定支援と関係構築」にシフトすると考えられます。

Q5. 中小企業でも AI-Powered GTM は実現可能ですか?

むしろ中小企業や少人数チームこそ、AI-Powered GTMのレバレッジが効きます。Lovable(8ヶ月で年商1億ドル)やHarvey、MercorといったAI-Nativeスタートアップは、少人数チームが4層を統合運用することで急成長しています。重要なのは規模ではなく、4層を統合する設計思想を持てるかどうかです。

参考情報

  • McKinsey & Company “Unlocking gen AI in B2B sales”: https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/unlocking-profitable-b2b-growth-through-gen-ai
  • McKinsey “An unconstrained future: How generative AI could reshape B2B sales”: https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/an-unconstrained-future-how-generative-ai-could-reshape-b2b-sales
  • Forrester “Meet The AI Agents Redefining B2B GTM Strategies”: https://www.forrester.com/blogs/meet-the-ai-agents-redefining-b2b-gtm-strategies-and-approaches-at-b2b-summit-emea/
  • Forrester 2026 B2B Marketing, Sales, And Product Predictions: https://www.forrester.com/press-newsroom/forrester-b2b-marketing-sales-product-2026-predictions/
  • Highspot “AI for Sales”: https://www.highspot.com/ai-for-sales/
  • ZoomInfo Pipeline “What is GTM AI?”: https://pipeline.zoominfo.com/sales/gtm-ai
  • AI-Native GTM Playbook (Substack): https://ainativegtm.substack.com/p/the-emerging-ai-native-gtm-playbook
  • PwC Japan “次世代のB2Bセールス”: https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/future-of-b2b-sales-01.html
  • Gartner “Strategic Predictions for 2026”: https://www.gartner.com/en/articles/strategic-predictions-for-2026